日本の最西端、長崎県に身を置く一武陽人の独り言

佐世保重工業株式会社 代表取締役社長

森島英一 (47陽会)

来し方

1960年に兵庫高校を卒業、神戸大学経済学部にギリギリ(だったと思う)入学。国際経済論を専攻、1964年卒業と同時に、外国を見たいとの強い衝動に駆られて貿易商社、日商株式会社入社。案の定、その後2002年までの38年間の内、23年間はまるで国際ボーフラ族的海外生活。2002年に縁あって日本の最西端、長崎県は佐世保市に造船所を持つ佐世保重工業に専務取締役として入社することになり、最後の商社マンとしての駐在地、韓国ソウルから帰国したときは、まるで「帰国オジサン」、ウチのカミさんは、従って「帰国オバサン」。二人の帰国子女は先に独立していたが、ハナから外国勤務か外資系勤務。一家まるごと日本の伝統社会にはまりきれない状態であったが、不思議なことに伝統と歴史をもって鳴る造船会社、佐世保重工業からお呼びがかかったのだ。 2002年当時、苦境にあえいでいた佐世保重工業もその後の世界的な海運ブーム、造船ブームのおかげで再生なり、今では念願の復配もでき、安定操業ができるようになった。私は2005年7月に社長に就任し、現在社長業4年目、「伝統を守りつつ変革を追求しよう!」と社員に訴えながら、世界的競争にチャレンジしているというのが現況です。

「出島経済」と「グローバリゼーション」

本年8月21日付日本経済新聞の「経済教室」欄に、日本経済研究センター主任研究員の竹内淳一郎氏が「日本経済短期予測」なる論文を発表されている。この中で竹内氏は「出島経済」、「出島企業」という表現で、輸出企業がここ数年の日本経済の好況の先導力となっていた、と分析されている。さらに続けて、昨今の米国発の金融危機が世界的景気後退を誘発し、日本経済も「出島景気」の終焉を迎えようとしている、との論旨だ。

他方、偶々同日付の朝日新聞「私の視点」欄には、三菱UFJ証券・チーフエコノミストの水野和夫氏が、「景気拡大の終わり」、「もう内需に頼れない」との趣旨で、これからはますますグローバルな視点、姿勢が大事だ、と述べておられる。「日本を引っ張る大企業・製造業も、利益の源泉は新興国経済だ。今後は、グローバル化と自分をいかに結びつけるかを考え、政府に依存しない心構えが必要だ。もちろん、グローバル化を敵視するだけでもだめだ」との診断である。

出島精神と坂本竜馬

同窓会の懇談コラムにちょっと硬い話しで申し訳ない気もするが、私は、一武陽人として、若い、前途洋々の後輩たちに自分の思うところを少しく記し、これからの私的生活と仕事生活、そしてこの二つを合わせたトータルな人生を自己実現の場として高めていって欲しい、と願う次第です。 竹内氏の表現をお借りして申し上げるのだが、出島精神を持って、生活し仕事をしては如何か、ということだ。出島精神に対立する概念としては「島国根性」という少々悪態めいた言葉がある。島国根性を捨て、出島精神を持って、未知のもの、新しいことで面白そうなことにドンドン、チャレンジしていこう、ということだ。外国の文化、外国の仕事におそれず挑戦して行く、アメリカがダメなら中国があるさ、中国がだめになったらブラジルがあるよ、ということでしぶとく生きて行く。個人レベルの話しとしては、異文化を積極的に取り入れることにより人間の幅を広げる、ものを見る目を養う、ということに他ならない。グローバリゼーションが休むことなく進む中、どういう新しい波が押し寄せてきても、柔軟に対処ができる、むしろ、グローバリゼーションをチャンスとして捉え、自己実現の高揚を目指す、という姿勢が、これからますます必要になろうと思う。

私は先日、Tさんという女性衆議院議員を激励する会に出かけてきた。大学が同じだということで個人的に応援したかったという理由以外に何の利害関係もないのだが、スピーチを頼まれ、申し上げたのが、「Tさん、貴女は国を思う高い志とそれを実現する実行力、実務能力をお持ちです、その両方を発揮して活躍してください」ということであった。 全く同じことを武陽会の後輩たちに申し上げたい - 高い志を持て、そしてこれを実現するための実行力、実務能力を養え、と。実行力とは、広い視野と柔軟な心、そして外国語を含むコミュニケーション能力だ。

明治維新を仕掛けた男、坂本竜馬は、維新の舞台づくりはしたが、その舞台に最後まで残ることなく短い生涯を終えることになる。彼の立ち動いた足跡と心の軌跡を辿ってみるに、国を新しい形に変えようという高い志、そして、長崎で立ち上げた、商社と海運会社の原型のごとき「亀山社中」(後に「海援隊」)に表出されるビジネス・センスは、私が上に述べた社会のリーダーたるべき人間が備えるべき資質そのものである。私自身非才な人間ではあるが、それだけに今や「社会の年長組」に属する身とはいえ、まだまだ成長してゆきたい、という気持ちだけは持って、日々仕事に生活に気合を入れて励んでいるところであります。

以上